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MGM2.23 2齣まんが1 「撮影のトリック」 なかせよしみ 

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180913に開催された創作同人誌即売会MGM2.23で、上のような2齣まんがの原稿を配布し、参加者の方に2齣まんがを描いてもらいました。最終的に17作品が集まりました。具体性のない人物と立方体らしきものをどう使って2齣目に繋げるかがポイントとなります。

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「撮影のトリック」 なかせよしみ 

 本作では下描きの立方体は溝で三つに分割された壁のようなものと表現されています。そして壁の脇と上には四人の人がいるのですが、彼らのスケールがバラバラで、一見して遠近感がおかしいように思えます。
 しかし二齣目では、視点が一齣目とは逆側に回り込み、これはカメラの性質を利用して距離が異なる位置にある壁をうまく一つの立方体であるかのように見せるトリックアートであったことがわかります。

 一齣目では背景には空と雲が描かれ、下から上への視点が表現されています。また、二齣目では簡素な線により少ない手数で地面が描かれ、視点が上から下へと切り替わったということが表現されています。
 また、一齣目では手前にいる人ほどディティールが詳しく描きこまれ、遠くの人ほどディティールが抜かれることによって遠近感が表現されています。二齣目ではカメラが奥に回り込んでいるので一齣目とはディティールの付き方が逆になっています。
 ある場面を別の視点から見た図を破綻ないように見せるには相当の技量が必要とされます。それを安々とやってのけている作者さまの確かな技量が見て取れます。

 穴の脇には掘り出した土とそこに突き刺さったスコップがあります。撮影のためにどうやってこの穴を作ったのかは説明台詞などはなくても読者にひと目でわかります。奥の巨大な壁にははしごが立てかけてあり、道具なしでは登れない奥の壁の巨大さを表現するとともに奥の人がどうやって登ったのかという読者の疑問に答えるものとなっています。まんが内世界では一齣目の画を得るために、フレームの外で大変な労力が費やされたことが表現されています。
 特撮であると、幾何学で正確な数値を求めた巨大な構造物を用意し、それを計算通りの場所に設置し、カメラの位置を低くするためにわざわざ穴を掘ったりと、思い通りの画を得るには大変な人手と手間と費用が必要です。しかしまんがは手で描けばいいだけです。物理的なカメラというものを必要としないので、本来は地面に埋まってしまうような視点であるとか、何の支えもない空中からの視点であるとか、物理的には不可能な構図もとることができます。また、実写と違って、幾何学的に多少不正確でも、絵であるがゆえに「読者の解釈」という人の脳を介した補正がかかり、ごまかしも利きます。

 このように実写であれば特撮を用いなければ撮れないような極端な構図も、まんがにおいてはペン一つで生み出すことができるということが、まんが初心者にも目で見てわかる、まんがの教科書に載せるべき素晴らしい作例だと思います。
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