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#MGM2 .23 #2コマ漫画 17(終) 「ハニートースト」A/T

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「ハニートースト」A/T

 本作では一齣目において下描きの立方体は巨大な構造物であり、人物は耐火服を着た作業員として表現されています。
 人の背丈の二倍以上ある巨大な構造物が地面稜線の奥側にあり、手前側にはカメラの近くにいる人物が大きく写っているという空間的配置が矛盾なく描かれています。

 まず目に付くのが絵の圧倒的な表現力です。作業員は耐火服を着て、奥の構造物に火炎を浴びせています。この火炎の表現がずば抜けて見事です。まんがにおいて、紙の白より明るい、光を発するものを描くことはそのままではできません。紙の白より明るく印刷される画材はないからです。しかし、本作においては、火炎によって光が発せられているその周りをハッチングによって黒くすることで、白と黒との明度差をつけ、あたかも光を発しているような明るさを表現しています。光を表現するには周りを暗くすればいいという、まんが技術の模範のような画面であると言えます。
 光の強い部分は大胆に白く飛ばしながらも、角の部分が黒く残っているため構造物が立方体であることはわかります。絵において「描かない」という選択は勇気のいることで、初心者はどこまでも描きこんで画面を黒でも白でもない灰色に染めてしまうものですが、本作はこの白の残し方が見事です。 
 この強烈な光の表現によって、鉄工所で金属を加工しているような場面が想像されます。

 画面右奥や上空にはトラックや輸送ヘリが描かれ、それによって物資が運ばれてくる、大掛かりな作業であることがわかります。ヘリを誘導する係や、荷物を引きずって移動している係もいて、この職人たちは集団を組織して働いていることがわかります。

 手前の人物は太い線で描かれ、近くにいるということが強調されています。逆に、遠くにあるものは細い線で描かれ、ディティールも適度に省略され、遠近感が表現されています。この耐火服は、縫い目がないことにより炎が入る隙間がないという合理性が表現されたデザインとなっています。また、縫い目などの線が少ないということは描く手間も減るということであり、同人誌即売会の会期中に多くの人数を短い時間で描かねばならないという状況下におけるデザインとコストのバランスまで考えられています。これはプロの思考です。

 この圧倒的な画力と、数々の要素を注意深く配置することによって、一齣目ではここが工事現場であるという状況が示され、何か巨大な、恐らくは金属やコンクリートなどとても硬いものでできている、堅牢な構造物が建築されているということが読者に理解されます。

 しかし二齣目で読者のその認識は一変します。
 二齣目では食パンを丸ごと使ったハニートーストが皿の上に盛り付けられており、人間がフォークとナイフを持っている様子から、ここが食卓であることがわかります。
 しかし同時に、一齣目にいた作業員も描かれていて、ここが一齣目と同じ場所であることがわかります。
 この構造物は実はハニートーストであったのです。作業員は小人であり、人間が食べる普通のサイズのトーストが、彼らの目線では巨大な構造物に見えていたのです。

 このハニートーストの表現も見事であり、トーストは金属でできているわけではないので辺がやわらかく曲がっていたり、側面が中心点に向かってやや撓んでいる様子までが卓越したハッチングから読み取れます。
 上には生クリームに薄切りの果物、いちご、ミントが乗っていて、チョコソースがかけられ、アイスクリームは少し溶けだしているところまで表現されています。
 二齣目において左の作業員がおそらく最後の仕上げとして消防車の放水のごとくチョコソースをかけたものと思われます。一齣目の作業と連続性を伴っていることがこれで証明され、一齣目の構造物と二齣目のトーストが同じものだということが読者にわかります。

 一齣目では硬い金属でできていたかと思われた構造物が、二齣目では一転してやわらかく甘くおいしい食べ物に見えてきます。この価値観の転換が見事であり、また、巨大な構造物と思われたものが実は十数センチしかなかったというスケールの転換も驚異的です。
 ハニートーストという日常の食べ物を作るために、小人の作業員が十数人がかりで大規模な工事をしているというこのギャップが素晴らしい落ちになっています。

 一齣目を見ると、耐火服にはコンセントのようなものが付いているように見えるので、彼らは充電されて動く小さなロボットなのかも知れません。二齣目で、人間に謎の言語で話しかけている所を見ると、人間が開発したロボットではなく、人間とは独自に進化した他星の機械生命体のようなものなのかもしれません。
 おそらくは彼らはハニートーストは食べないのでしょう。生態が全く違う有機生命体の消化器官の構造や食文化を調べ上げ、このようにすれば人間が喜ぶ食べ物というものが造れるはずだという理論に基づきプロジェクトを立ち上げ、大規模工事のような感覚で料理を行っているのかも知れません。
 出来上がったものは人間から見ると一食で食べてなくなってしまう料理でしかありませんが、見事なハニートーストであり、異種との交流が成功したというSF的な喜びが感じられます。

 同じものが全く別のもののように見えるという視点変更が見事であり、SF的な面白さも読み取れます。作者さまのとてつもない技量と、読者が何を面白いと思ってくれるかという、まんがの根本の深い知識が感じられる作品です。
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