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170212コミティア119で見た同人誌2

「long long year」赤木野安吾


 カラーまんが108頁。シンプルな線で描かれた1頁の短いまんがを収録したものである。どれもセリフはない。

 「断髪」というタイトルの一編。主人公の女性がある夏の雨の日に自らの長髪を見て、その髪を整えに理容室に行った日のことを思い出す。回想の中では髪は現在よりやや短い。女性は理容師とキスをし、恋に落ちたことが示される。そして時間は現在に戻り、女性は自ら鋏を以って少し伸びた髪を切ろうとする。髪を切るのにその思い出の理容室に行かないのはなぜか――理容師との恋が髪の再び伸びるまでの時間で終わってしまったのであろうか。伸びた分の髪を切り取ればその思い出は消えるだろうか。雨が降っているのもまた寂しさを醸し出す。長髪は湿気を吸うと質が変化することもまた女性の思い出を補強しているのだろう。女性の恋は梅雨に始まり、夏の終わりの夕立の降る時期で終わってしまったのだろうか。以上がセリフなしの1頁の中に凝縮されている。各まんがは四季をイメージした四つの章に収められているが、「断髪」は「summer」という章の終わりに配置されているのも、夏の終わりを感じさせる。  

 シンプルな線で描かれたキャラクターたちはかわいらしいが皆どこか失恋や終わってしまった失敗の切なさを湛えている。広く読まれるべき心に染みる一冊。
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