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#創作同人電子書籍 紹介 「菫異邦」小原愼司



「菫異邦」小原愼司

 モノクロまんが32頁。アフタヌーンで連載されていた「菫画報」の続編が16年を経て先生ご自身の個人レーベルから電子書籍化された。

 遅刻しそうだった女子高生菫が近道をしようとビルの隙間に入ったら異世界に出てしまった……

 巨大怪獣と巨大ヒーローが戦っているミニチュア世界、戦乱の世界、不思議の国のアリスの世界のマッドティーパーティ、シャイニングのような斧を持った怪人の闊歩する洋館、多数の異種族が暮らすSF世界、巨大な野菜の生える世界……ビルの隙間で共に詰まった謎生物は不思議の国のアリスの時計うさぎの役割を果たし、異世界への導きとなる。菫が駆け抜けた世界はどれも異様ではあるが生命の危機を感じるようなことはなく巨大ヒーローのビームを食らっても「いたたた」で済まされるぬるい世界観が魅力。
 
 子供は時に自分の妄想を真実だと思いこんでしまうことがあり、大人になってからよく考えると現実ではありえないような何か異様な体験をした気がするということがある人もいると思う。本作を現実的に分析するのなら、菫が遅刻した言い訳に半分夢見ていた頭で異世界の冒険譚をでっち上げたとも考えられる。最初のビルの隙間が本屋の隣であるというのは象徴的である。実際は菫は登校の途中で本屋によって立ち読みでもしていたのではないか?
 菫が登校の途中に駆け抜けた異世界はおそらくいずれも菫が今まで見てきた物語の中の世界であろう。この回では語られないが菫は読書が好きな新聞部の部員である。児童文学をモチーフにした、現実と虚構が混淆する回はよくある。菫が巨大ヒーローに「よその家潰してるぞ」と叫ぶのは、物語の外連というものに対するメタ的なツッコミであり、菫が物語の世界から卒業しかかっている、つまり物語は誰か大人が商売のために作ったものであることに気づきかかっているとも取れる。

 最後、迷い込んだ上小路が見えている異世界の隙間を菫がピシャっと閉じる。菫は朝の空想をやめて学業という日常に戻るのである。上小路は災難だったが次の話では何事もなく復活するだろう。



 名作菫画報も電子書籍化されているのでぜひ。うちには紙書籍版が2冊ずつある。


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