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コミティア122で読んだ本1

 171123、東京ビッグサイトで創作同人誌即売会コミティア122が開催されました。コミティアというのは、どの出版社でまんがを描いてるでもなく自主的に作品を制作している人たちが全国から集まってきてまんがを頒布する場所です。

 ビッグサイトの3つのホールを借り切って5000サークルくらいが集まります。古くは自主的に本を造るというのは、簡易印刷機ですとかの機械が必要で一人ではとても無理であり、○○大学漫画サークルのようなサークルという集団で参加するのが普通だったのでサークルというのですが、現在ではコンビニのコピー機を使ったりですとか、手頃な値段で超高品質の印刷をしてくれる印刷屋さんなど本を自主制作する手段が増えかんたんになっているので、一人とか二人ぐらいで参加するのが一般的です。

 ビッグサイトには会議机がずらっと数千ならんでいて、各机の半分の面積が一サークルのスペースとなります。そこに自分でつくった本を積み上げて、多くの場合は作者自身が売り子を努めます。積み上げられた本の作者がそこにいるのです。わたしも本を頒布する側で参加したのですが、折をみてスペースを抜け出して他のサークルさんの本を買ったりします。

 そこで手に入れた本をご紹介致します。




「三日月妹/遣唐使」昼寝堂
http://www.geocities.co.jp/AnimeComic-Ink/3273/
(作品紹介がないため作者さまサイトへのリンク)

 「三日月妹」「遣唐使」二編収録の短編まんが。

 「三日月妹」
 妹は三日月の晩になるとやってくる……
 少女には妹はいないのだが、三日月の晩にだけ妹がどこからともなくやってくる。その晩は少女と妹は楽しく遊んで過ごすのだが、朝になると妹は消えてしまう。消えてしまうのを防ぐため部屋に鍵をかけたり体を紐で結んだりしても無駄である。「いつも三日月ならばずっと一緒にいられるのにね」と少女はつぶやいてこの短いまんがは終わる。三日月は当然月に一度しか来ない。

 「遣唐使」
 クラスで、もうなくなった唐に行っていろんなことを学んでくる遣唐使が選ばれる。唐はもう存在しないのだが、遣唐使という文化だけが残っていて実際に行くわけでもないのにいまだに遣唐使が選ばれるのである。

 どちらも「無」をテーマにした作品である。いないはずなのだが三日月の晩にだけやってきて朝になると消えてしまう妹、もうない世界へ旅立つ遣唐使……無から生まれ無に還っていくという無常観が感じられる。

 まんがや創作作品というものは、本来人間の生活のためには必要のないフィクションを無から創造するものである。まんがを読んだとしても、実生活のためになにか役に立つ資源はなにも手に入らない。貴重な時間、いわば寿命の一部を浪費してまんがを読んでも読まなくても、人生に目に見える変化はなにもない、まったくの無でしかないのである。しかしそれでも人はまんがを読む。なぜだろう。無から生まれなんの役にもたたず無に還るものであるはずなのに。

 昼寝堂作品の常であるが、よけいなものの描かれないシンプルな画面も雰囲気に合っている。このまんがを読んだという経験は決して無ではない。三日月の晩に妹が唐突に現れるように、十年後二十年後、こういうまんがを読んだことがあるな……とふと思い出すときがくるだろう。とても美しく切ない作品。
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