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#コミティア122感想 読んだ本3「途中」昼寝堂

「途中」昼寝堂

 果てしなく長い階段を登っていく少女。この建造物には、階段の途中にときどき水道と生きるのに必要なものがおいてある部屋がぽつんとあるだけである。部屋に窓はなくこの建造物の外の世界はうかがい知ることはできない。少女は気がついたときには最下階の地下室にいて、年単位の長い時をかけ階段をひたすら上を目指して登って来ていた。

 そんな彼女が道の途中で、上から降りてきたという別の女性と出会う。彼女は彼女で、気がついたときにはこの謎の建物の屋上にいて、最下階を目指してひたすら階段を降りてきていた。謎の建造物の真ん中の階の部屋で二人は出会う。下から来た少女は最下階の話を、上からきた女性は屋上の話を、お互いにしあう。相方の見た世界はいったいどんな場所なのか……二人は同じ部屋で数年の時を過ごす。

 数年ののち、彼女らは再び各々の目的地である最上階と最下階を目指し別れる。下の少女は上に、上の女性は下に。また長い孤独な旅が始まる。だが、二人には数年を過ごした思い出がある――

 何もない世界でのサバイバルの様子を省いた、象徴的な物語である。下の少女にとって自分が来た地下室は、ただ土に囲まれているだけのなんでもない世界である。また、上の女性にとっては屋上は空が見えるだけで何もない空虚な世界である。しかし下の少女は上の世界に、上の女性は下の世界にあこがれそこを目指し旅をつづける。人は誰しも道の途中にいて、それらの道は一時交わることはあっても同じ方向を指すことはない。だが彼女らが途中で各々の道へと別れ、一人自分の目的地へと向かうそのとき、かつてひととき過ごした思い出がが歩を進める力強い助けとなっているはずだ。
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