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#コミティア123作品感想 5 「うかれて除夜の鐘」「モノラル」「アイドルさん、スーパーへゆくの巻」

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うかれて除夜の鐘 image labo

 うかれると体が浮く女の子と大晦日の深夜に初詣に行く。主人公の中学生男子ポッカと浮く女の子どんちゃんはクラスメイトであろう。彼らが大晦日という、子供が深夜に出かけても不自然でない特別な時間に一緒に出かけるというシチュエーションがいい。

 彼らは寺に除夜の鐘を撞きにいくわけだが、途中でどんちゃんがうかれて空に浮かんでしまうというハプニングが起きる。俯瞰アオリ俯瞰俯瞰アオリ俯瞰というコマの視点変更のリズムが浮遊感を生んでいる。

 「除夜の鐘は煩悩を追い払うためにつくらしい(中略)鐘は何かとお別れをするための音」というモノローグから、ポッカは何かに別れを感じていることが示される。うかれて空に浮くどんちゃんと、地を走ることに喜びを感じるポッカは違う世界の住人なのである。彼らの仲が男女の仲に発展する可能性は同行したどんちゃんの弟の存在によって取り除かれている(男女との間に肉親をワンクッションとして置くのは性的関係を封じるのに創作ではよく使われる手法である)。ポッカとどんちゃんが子供らしい友達でいられる時期はここで終わってしまう。大晦日の夜に一緒に空に浮くという特別な体験を最後に、恐らくこの3ヶ月後に彼らは別々の高校に進学し、再び会うことはなくなってしまうのだろう。「このまま会えなかったらどうしようかな」というセリフがそれを象徴している。

 上記はわたしが解釈したものであり読者には示されていない。ポッカはおそらくは陸上部かなにかで走っているものと思われるがその情報もない。説明する必要はないが、もうすこし読者の側に歩み寄ってもよいのではないか。例えば初詣に行った寺で彼らが合格祈願のお守りを買って持っているとか、さりげなくコマの隅にでも情報を示して欲しかった。

 絵はシンプルでかわいい。背景も大晦日の、子供が深夜に出歩けるという特別感と、何かが終わってしまうという寂寥感を適度に表現できている。

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モノラル image labo

 少年と、二人暮らししている姉の日常が淡々と描かれる。だが最後の2頁で今までの日常は一気に非日常へと変貌する。

 ただ現状ではフィリップ・k・ディックを嚆矢とする人間とは何か? という古典SFの範疇に大人しく収まってしまう。何をどうすべきとは上手く言えないのだが、もうひとつ、あと一歩だけ踏み込んでくれれば何か新しい世界が見える気がする。
 夕日差し影が伸びる「誰もいない」部屋の表紙がいい。

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アイドルさん、スーパーへゆくの巻 image labo

 アイドルたちがスーパーで買物するだけのまんがである。なぜ彼女らがアイドルの衣装のままで買い物に趣いているのかはまったく説明がない。リーダーらしい少女はスーパーに慣れているようだが、他二人はあまり自分では買い物はしないのかスーパーの作法がわかっていないらしい。ただ、スーパーあるあるは要素の一つではあるがこのまんがではそれをメインにしたかったわけではないと思う。

 リーダーは普段はカートを使わないので少量しか買い物をしないらしいことがわかる。恐らくこの日に限ってはメンバーのぶんの食事も作らねばならず、カートを使うほどの大量を買う必要があったのだろう。それに関する物語もどこかから読み取れたなら。

 リーダーが子供の時に母親とスーパーに行った時の事を思い出すシークエンスはとても良い。もしこの思い出のスーパーが、今いるスーパーと同じ店舗であれば、現在では母親は亡くなっていることが暗示される(単に存命中の母の代わりに買いに来たのかもしれないが)。違う場所ならば、リーダーは親元を離れて遠く都会でアイドル活動をしているであろうことが示唆される。後者のほうが可能性は高そうだが、現状ではどちらなのかをまんが中から読み取ることはできない。
 これもまたもうひとつだけ何かがあれば趣深いものになるかとおもう。惜しい。
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